やる人がいてへんかったら必要ないんちゃう? by 木村泰子さん
タイトルからして「痛快だな〜」と思いながら読み進めて、終盤ではグッとくる言葉もあった。引用の形でメモしていきたい。
https://gyazo.com/2b7341921e953b2487a68f4345a78ff2
私は即答したんです。「やる人がいてへんかったら、必要ないんちゃう? ナシでいこう」って。答え簡単やったんですよ。だって自分たちの任意団体やから。学校にお願いされる団体と違うから。
そうしたら、みんながキョトンとして「なくてもいいんですか?」って言うから、「なかったらあかんの?」って反対に聞いたんです。だって誰も自分からやりたいって思う人がいないのに、「PTAありき」でPTAをつくるなんて、学びの場やでナンセンスや、って。
「学びの場やでナンセンスや」って、いい台詞だなあ。学びの場がどうあるべきか、について考えを持っているということだよな。頼もしいことだ。
集まってそのプランを立てんのが、ものすごい楽しいねんって。学校の1階にコミュニティルームってつくってあって、そこへお菓子持ってきて食べながら、みんなでばーっとアイデアを練るんです。子どもらもそこにいて、「何やるん? 何やるん?」とか言うてやってるわけです。これ大成功したんですよ。父ちゃんたちが花火したり、お化けになったり、カレー作ったり、いろんなことして。
「やりたい」から始めたことは楽しい、ってのはあると思うなあ。
この組織が「SEA」(Supporter Educator Associationの略)です。PTAではなくてSEA(読み方は「シー」)。SはSupporterのSです。PTAのPはParent、親だけでしょ。でも子どもを育てるの親だけ違うで、地域住民もいろんな大人が大空の子どもを育ててる。真ん中の「E」はEducatorのE。PTAのTは先生でしょう。教えんの先生だけちゃうやんな。
Paernt → Supporter
Teacher → Educator
だからこの組織は、あくまでも「できるときに、できる人が、無理なく楽しく」。こんな合い言葉なんですよ。
やわらかい言葉の奥に「ぜったいに搾取しない」という強い気概を感じる。よい。
それで「俺、リーダーやるで」っていうひとりの父ちゃんが、毎朝仕事に行く前に玄関立って、「おはよう、あんな俺な、SEAのリーダーになりたいねんけど、会長いう名前は嫌やねん。なんかええ名前ないか」とか1週間ぐらい聞いとったんちゃうかな。そうしたら子どもらが「キャプテンがいい」って。
子どもらに意見を求めているのがめっちゃいいな。
それに、やらなあかん仕事、全然ないから。やりたいことだけやっていく。学校から頼むことなんか何もないもん。
――ほんとに、何にもないんですか?
何かあるか? 学校からPTAに何頼む?
――卒業式、入学式や運動会のときの、来賓のお茶出しとか……。
お茶出さんといたらええねん。
これはちょっと、関西弁をうらやましく感じたところがあるな。出さんといたらええよね。ぼくもそう思う。飲みたい人は自分で買ってきたらいいもんね。 それはその学校が必要なプロジェクトを立ち上げたらいい。前年度必要やったけど、今年度必要じゃないものもある。PTAの一番悪しき文化は「去年やってたからやらなあかん」、これです。
PTAの目的は、「大人が学ぶ」ということです。そもそもPTAの組織って「子どものために」って言うてるけど、文句出てるじゃないですか。もうPTAなくしたらいいとか、なくしたらあかんとかいう議論をしてる。ということは、「子どものため」っていうお題目は、もう通用しないということです。
少子高齢化が進む社会において「大人が学ぶ」って大きなテーマだよな〜。あるいは「生涯、学び続ける」というか。就職のタイミングを境界にして「ここまでは学ぶ、ここからは学ばない」ってのは、現状にマッチしないと思う。これは『日本人の勝算―人口減少×高齢化×資本主義』にも書いてあったっけね。 事実と批判は大違い。今の日本社会って、なんか事実が言えない大人が山ほど増えてるんです。あったのに「ない」って言うわけですよ。でもあったものは、あったやろって言ったら、それは批判に取られるわけですよ、事実やのに。こんなおかしいことを子どもに見せてるわけです。だから批判じゃなくて、事実。事実を語る大人、もっと増えなあかんちゃう?
ヒッ、つらい話…。そういう大人が増えているかどうかはぼくにはわからないけれど、そういう大人がいることは目の当たりにしてしまっている。
何回もぶれるんですよ。大空もそうでしたよ。SEAだって言いながらも、PTAに戻るんです。何回もぶれんねんけど、でもその時に気付いた人間が、「いや、やり直ししよう、巻き戻ししよう」って。ひとりでもそのことを発信できるチームができてたら大丈夫ですよ。そういう人を排除する組織は、困ってる子は全部排除されます。
この段落から先は、PTA 云々じゃなくて「子どもたちが学ぶ場である小学校を、どういう場にしたいか」という観点の話で、とてもグッときた。 だから大空の子どもたちは、自分の学校、自分でつくってるから、ものすごい大事にしますよ。平気で「校長、ぶれてる」って言いますよ。言われたら、納得します。言われるたびに、「この子、自分の学校つくってるねん。幸せ」とか思います。